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2020.11.09

多重人格のススメ。

Hiroaki Matsu

Director

2度目のSPARKブログとなります。松です。

前回「カレーとクリエイティブ」について書いた通り、CMの企画演出を生業とするほかに「カレー細胞」という別名でTVや雑誌の企画協力・執筆、イベントプロデュースなどを任せられることも多くなりました。
「マツコの知らない世界」にも出演させていただきました。

その他、アニメの企画演出やプロデュース、昭和の大スター小林旭さんのYoutube、リアル脱出ゲームの制作スタッフなど、
やっていることが多岐にわたりすぎて自己紹介に困ることが多い今日この頃です。

それぞれのプロジェクトで関わっている方々は、私の他の顔についてあまり知りません。
それはそれでビジネス的に非効率な部分もあるのですが、それ以上に得るものも多いのです。
このことを私は、特にモノづくりの現場にいる人に伝えたい。

例えば「CMディレクターとしての私」には、「しかるべき筋を経由し、しかるべき手順で選抜された情報」しか入ってきません。それだけを見ていると、それが世界の常識のように感じることさえあるでしょう。

「CMディレクターとしての私」が「プロデュースもやりたい」と言ったところで、
それはある種の「掟破り」であり、「CMディレクターとしての私」としての存続すら危うくしてしまいかねません。
そりゃあそうでしょう。もし私がCMプロデューサーだったとして、いい気分はしないでしょうから。

ところがソーシャルネットワーク上では、たくさんの「私」を演じ分けることができます。

すると、それぞれの「私」には、その役柄に対しふさわしい情報、その役柄でなければ得ることができないモノがやってくるのです。

とてもとてもわかりやすい例で言えば、インスタグラム。

フォロワーが10Kを超える頃から企業案件のオファーが増えてきます。
「CMディレクターとしての私」からはプレゼン資料の最後から3ページめあたりにある「SNS施策について」の図で、アプリアイコンを結ぶ双方向の矢印と、その脇に太ゴシックで書かれた「拡散」という文字くらいしか見えなかった事象が、とてもとても具体的なものとして見えてきます。
「ははぁ、こういうことだったのか。」「なるほど、うまくやってるなぁ。」ということもあれば、「このやり方って、もう長くは続かないよなぁ。」「随分テキトーだなぁ。」「もう少し、こうすれば良いのに。」と思うことだって多々あるんです。
表と裏を見ることでしか、気づけないことはたくさんあります。

また、思わぬ企業ニーズを掘りだせることだってあります。

人は、相手の立場や自分との関係性によって、話せることが変わってきます。

私も数年前まで、会社で管理職をやっていました。
管理職だからこそ見えてくる景色も確かにあるのですが、逆に見えなくなってしまう事柄のなんと多いことか。
自分の立場がFIXすればするほど、私という個人にではなく管理職という立場なりの情報選別がなされてきます。
これはとても恐ろしいことで、映画「マトリックス」や「トゥルーマン・ショー」のように、
その世界にいることで生々しい声がパッタリ聞こえなくなってくる。
逆に自分の生の声を届けられる相手も限られてくる。
クライアント側だって同じです。

予めいくつかの立場と人格を持っていることで、クライアントの本音や、大きな声では言えない課題に耳を傾けることができます。

その課題を、また自分の別人格で解決できることだって多々あるんです。

・・・話が大きく(南西方向に)ずれますが、インド、特に南インドからなぜ優秀なIT技術者が続々生まれるか、知っていますか?
インドにはカースト制度というものがあって、先祖代々決められたカーストによって、職業や社会的地位が決まってしまいます。そのままでは頑張っても頑張っても、そのカーストにふさわしい情報・報酬・人生しか与えられません。
ところが、ITという新しい職種は、古来定められたカーストには当てはまらないのです。
代々貧しいカーストに生まれた者でも、ITを極め海外に出れば、カーストから抜け出せるのです。
そのモチベーションたるや、到底他に敵うものはないでしょう。

話を戻します。
現代日本のような「成熟した」社会の「特定の業界」では、カースト制度のような情報のクラスタ化が進んできます。けれども今は、自分の意識次第で自らを「多重人格化」できる。
そのことで常にカーストフリーな状態に身を置き、いくつかの角度から軸足を適切な状態へとずらし続けることで、時代の変化に押しつぶされない自分を保っていけるのではないか。そう考えるのです。

もちろんこれは、CM一筋を極める人を否定するわけではありません。
むしろその覚悟は素晴らしく、自分にできないからこそ、このような考えに至っているわけです。

先日新登場したiPhone12の撮影機能は(また話が逸れてますね)、もはや今までのカメラのような光学機器ではなく、
空間を3Dで捉えるスキャナーへと変化しています。アングルや被写界深度までコントロールできる脅威のガジェットです。
我々も、1つのアングルから見える平面の景色だけでなく、物事を多次元で捉えていかねばならない時代に来ているのでしょう。

次は樋口さん。宜しくお願いします。