BLOG

2019.02.04

うろちょろ

Takuji Kitamura

Director
Planner

ネズミのようにうろちょろしていた。

撮影所に潜り込んだのは、27年前の春だ。
現場に入るルートが整備されていなかったので「潜り込んだ」が正しい。
潜り込んではみたものの、与えられる仕事など当然ない。
先が見えない場所で、ただうろちょろしていた。


照明の力仕事を勝手に手伝っていたら、
「兄ちゃん、つぎ石井輝男監督なんだけど来てみっか?」と声をかけてもらった。
「ゴジラ」の照明チームだった。


彼らは日本映画の大作「敦煌」から帰還したばかり。
中国の砂漠で何ヶ月も続く過酷なロケは、スタッフ間で話題になっていた。
「敦煌帰り」の照明マンは、戦場からの帰還兵のように肩で風を切って歩いていた。
カッコよかった。


照明部は荒くれ者の集まり、毎日ゲンコツが飛んできた。
でも、仕事が終わると場末のスナックに毎日連れて行ってくれた。
照明のおっさんが、その日の役者の芝居談義に熱くなり、
若い連中は新しいライティング論で熱くなった。


「あの壁のあの柱の部分、役者さんが通る時パラを入れたんだけど大丈夫かな?」
自分が当てた明かりをドキドキしながらラッシュに見入った。
嬉しくて、楽しくて仕方がなかった。


小津安二郎のために作られた機材や、
溝口健二のために作られた特機を普通に使っていた。
東京物語の撮影部の体験談にワクワクし、
黒澤組での体験談に興奮し、原節子の逸話に胸をときめかせた。
山田洋次の現場の静けさに圧倒され、
鈴木清順の現場でのお任せっぷりに巨匠の余裕を感じた。


照明部の若手が集い、勝手にセットを使ってライティング練習し、
撮影部の若手と一緒に、マガジンへのフィルムの詰め方を練習した。


新しいモノに飢えていた。
腹をすかせた犬のようにガツガツしていたし、
懸命だったし、怠け者だった。


基本的には、あの頃と自分は変わっとらんな、と思う。
未だに「新しいモノに飢えている」し、
「懸命さ」に心が揺さぶられるし、怠け癖も抜けていない。


今はと言うと、SXSWの影響で新しいテック系のイノベにワクワクしている。
その周辺を、ネズミのようにうろちょろしている。
さてと、次はどうやって潜り込もうかな。

次は、クリエイティブにとても純粋なウンギョンさんです。
僕がCD、ウンギョンDirで、年末年始は海外ロケを乗り切りました。
クリエイティブに「懸命」な女性です!